大規模言語モデルは本当に推論しているのか?

はじめに

ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)は、流暢で魅力的なテキストを生成する能力で一般の関心を集めています。しかし、カンバムパティ教授によると、これらのモデルには真の論理的推論や出力の正確性を保証する能力という根本的な限界がありますと主張しています。

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ステロイドを投与したn-gramモデル

LLMはエッセンシャルに「ステロイドを投与したn-gramモデル」であり、巨大な学習データとモデルサイズのおかげで長い単語列を処理できる能力を持っています。LLMによる圧縮と一般化は文法的に正しく、スタイルの統一された出力を可能にしますが、必ずしも真の理解や推論に直結するわけではありません。LLMは言語の分布特性をよく捉えられますが、演繹的推論や出力の正確性を検証する能力に欠けています。

推論と形式言語

講演者は自然言語と形式言語の違いを説明しています。自然言語はより柔軟で制約がないため、解釈器や検証器を開発するのが困難です。論理的推論は形式言語の文脈で明確に定義されていますが、LLMは主に現実的な出力を生成することに重点を置いており、第一原理から新しい知識を導出する能力に乏しいと指摘しています。講演者は推移的推論やドメインに依存しない問題解決に失敗するLLMの例を示し、真の推論能力の限界を明らかにしています。

推論におけるCreativityと検証

講演者はLLMの創造性能力を認めつつ、この創造性は出力の正確性と信頼性を確保するための厳密な検証と組み合わせる必要があると述べています。帰納的ジャンプ(創造性)と演繹的推論(検証)の区別について説明し、包括的な推論システムにとって両者の重要性を強調しています。講演者は、LLMの成功を単に称賛するのではなく、その限界を慎重に実験的に明らかにする必要性を強調しています。

LLM Moduloフレームワーク

講演者はLLM Moduloフレームワークの概念を紹介しています。このフレームワークは、LLMの長所(創造性と着想)を活かしつつ、推論と検証の欠如という弱点に取り組むことを目的としています。LLMが解決案を生成し、様々な検証者や批評家(LLMを使って構築可能)によって検証・洗練されるという生成-検証のアプローチを採用しています。LLMと検証者の双方向の相互作用により、創造的でかつ確実に正しい解決策を生み出すことができます。

今後の動向と研究の方向性

講演者は、LLMと強化学習やニューロシンボリックアプローチなどの他のAIシステムを組み合わせたハイブリッド・アーキテクチャの可能性について議論しています。AIの分野では過度の期待や楽観的な主張に陥りがちであるため、実証的な研究における懐疑心と厳密性の維持の重要性を強調しています。論理、推論、計算複雑性についての広範な理解を若手研究者に促し、AIの分野で意義のある進歩を遂げるよう呼びかけています。

おわりに

大規模言語モデルは流暢で魅力的なテキストを生成する能力に優れていますが、真の論理的推論や出力の正確性を保証する能力に欠けています。講演者は、LLMの長所と外部の検証システムを組み合わせたハイブリッドアプローチを提唱し、より包括的な推論能力の実現に向けた進歩を訴えています。

主なポイント:

  • LLMは本質的に「ステロイドを投与したn-gramモデル」であり、現実的な出力を生成できるが、真の理解と推論は欠いている。
  • 形式言語で明確に定義されている論理的推論は、LLMが主に現実的な出力に重点を置いているため持ち合わせていない重要な能力である。
  • 講演者はLLMの創造性を認めつつ、出力の正確性と信頼性を保証するための厳密な検証の必要性を主張している。
  • LLM ModuloフレームワークはLLMと外部の検証者や批評家を組み合わせ、創造的かつ確実に正しい解決策を生み出す。
  • LLMと他のAIシステムを組み合わせたハイブリッドアーキテクチャ、論理、推論、計算複雑性に関する深い理解は、AIの分野で意義のある進歩につながる。
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